躍進の裏で下されたFAからの処分、サポーターの意識改革を促すハル・シティ
ピッチ上での素晴らしいパフォーマンスでプレミアリーグの主役に躍り出たハル・シティAFCだが、ピッチ外では過去の不適切な事象に対する重い代償を支払うこととなった。フットボール・アソシエーション(FA)は、今年2月に開催されたFAカップのチェルシーFC戦において、一部のハル・シティサポーターが同性愛嫌悪的な差別チャントを合唱した行為に対し、クラブに3万ポンド(約570万円)の罰金処分を科したことを発表した。
クラブはFAルールE21(サポーターの行為に関する規則)への違反を全面的に認め、今後の再発防止に向けた具体的な「行動計画(アクションプラン)」の実施に同意している。さらにクラブ側は、差別チャントへの関与が特定された3名のサポーターに対して、最低3年間のスタジアム入場禁止処分を下すという厳格な対応を迅速に決定した。
ハル・シティは公式声明を通じて「あらゆる形態の差別を断固として非難し、すべてのファンが安全かつ快適に観戦できる環境作りに取り組む」と表明している。問題となったチャントは法的にヘイトクライム(憎悪犯罪)に該当する可能性があり、警察による逮捕や刑事訴追の対象にもなり得る。今週末に控えるスタンフォード・ブリッジでのチェルシー戦を前に、クラブは遠征するサポーターに向けて、自制とマナーの厳守を強く呼びかけている。
開幕2連勝とカップ戦突破、ヤキロヴィッチ体制がもたらす最高のスタート
ピッチ外での問題に対処する一方で、セルゲイ・ヤキロヴィッチ監督が率いるトップチームは、プレミアリーグ昇格初年度ながらこれ以上ないスタートを切っている。8月のリーグ開幕戦では、本拠地MKMスタジアムに詰めかけた大観衆の前でマンチェスター・ユナイテッド(マイケル・キャリック監督)を2-0で一蹴。新戦力のナイジェリア代表DFセミ・アジャイが泥臭く先制点を押し込むと、今夏にクラブ史上最高額で加入したセネガル代表DFノベル・メンディが、MFレーガン・スレーターの正確なフリーキックからデビュー戦を祝うヘディングシュートを突き刺した。
続くカラバオカップではストーク・シティとのアウェー戦に臨み、MFキーラン・ダウェルがエリア外から放った強烈な左足のボレーで同点に追いつくと、PK戦の末に勝利を収めて3回戦へと駒を進めた。勢いは止まらず、リーグ第2節では同じく昇格組であるコヴェントリー・シティ(フランク・ランパード監督)と対戦。モハメド・ベルーミのスルーパスから抜け出したカナダ代表FWリアム・ミラーが冷静なフィニッシュを見せ、1-0での勝利を掴み取っている。この勝利は、ヤキロヴィッチ監督率いるチームがランパード監督から挙げたキャリア初の白星でもあった。
この好スタートを支えているのは、今夏に加入したギリシャ代表GKコンスタンティノス・ツォラキスの圧倒的な存在感だ。2試合で合計8本の決定的なセーブを披露し、ブライアン・ムベウモとの1対1やタイウォ・アウォニイの至近距離からのシュートを驚異的な反応で阻止。2試合連続でのクリーンシート達成に大きく貢献した。さらに中盤のダイナモであるスレーターは、守備での強度の高さに加え、マンチェスター・ユナイテッド戦のアシストを含めて攻守に奮闘。8月末にはクラブとの契約を3年間延長し、リーグ・ワン(3部相当)時代から続くクラブとの強い絆をさらに深めることとなった。
育成年代に浸透する哲学、U-21チームが体現する「5バック」の挑戦
トップチームの堅守速攻のスタイルは、下部組織にも確実に浸透し始めている。9月8日に行われたプレミアリーグカップのグループJ第2節で、ハル・シティU-21はブレントフォードFC U-21と対戦し、1-1の引き分けで勝ち点1を分け合っている。
この試合でハルU-21は、今シーズン初めて3バック(実質的な5バック)のシステムを採用した。今夏にブラッドフォード・シティから移籍し、この試合でフル出場を果たした19歳のDFジョージ・グッドマンは、この戦術変更がトップチームの成功に触発されたものであることを明かしている。ヤキロヴィッチ監督が構築した強固な守備ブロックと素早いトランジションをU-21チームでも再現することで、若手選手たちがトップチームのスタッフに対して自身の適応力をアピールする絶好の機会となった。
試合は前半20分、エド・ディバインの打点の高いヘディングシュートでハルが先制したものの、ブレントフォードのアイザック・ホランドに同点ゴールを許し、1-1のドローで決着した。それでも、相手の激しいプレスに対抗して粘り強く戦い抜いた守備陣の連帯感は、トップチームさながらの成熟度を感じさせた。この勝ち点1により、ハルU-21は得失点差でブレントフォードを抑えてグループJの首位を維持している。若きタレントたちがトップチームと同じシステムを経験することは、将来的な昇格へのハードルを下げる意味でも極めて有意義な試みだ。
ソルバ・トーマスの無事と週末のチェルシー戦に向けた展望
週末のチェルシー戦に向けて準備を進めるチームにとって、最大の朗報はウェールズ代表MFソルバ・トーマスが交通事故から無傷で生還したことだ。コッティンガムの練習場付近で発生した自動車事故の画像がSNS上で拡散され、ファンの間で心配の声が広がっていたが、クラブは即座に声明を発表。トーマスが怪我を負うことなく、車から自力で脱出したことを確認し、サポーターに安堵をもたらした。
ピッチ内外で様々なトピックが渦巻く中、今週末のチェルシー戦はハル・シティの真価が問われる一戦となる。チェルシーは今季、シャビ・アロンソ監督のもとで洗練されたポゼッションフットボールを展開しており、昇格チームにとってこれまでにない厳しい試練となることは間違いない。ヤキロヴィッチ監督が磨き上げた5バックの守備組織が、アロンソ率いるチェルシーの強力な攻撃陣をいかに封じ込めるかが焦点となる。
ハル・シティにとっては、ピッチ上での戦術的勝利を求めると同時に、サポーターによるスタジアムでの振る舞いを通じてクラブの尊厳を示す戦いでもある。処分を経て、ピッチ内外で真の「プレミアリーグ基準」に到達できるか、その重要なステップがスタンフォード・ブリッジで幕を開ける。