ポートマン・ロードで激突する両雄の布陣
プレミアリーグ第3節のナイトゲームにおいて、ポートマン・ロードでイプスウィッチ・タウンとリバプールが激突する。ホームのイプスウィッチは前節のオールド・トラッフォードでの悔しい敗戦から立て直しを図り、本拠地の熱気を取り戻したい一戦となる。開幕節で手応えを得ながらも前節は地力の差を見せつけられただけに、本拠地サポーターの前で強豪相手に意地を見せたいところだ。一方のアウェイに乗り込むリバプールも、今季のタイトルレースで確固たる立ち位置を築くべく、強烈なメンバーを敵地に送り込んできた。開幕からの連勝街道を維持し、過密日程が本格化する前に確実な勝ち点3を積み上げたい思惑が透けて見える。
今夏の移籍市場最終日に加入したジアン・フレミングが早速ベンチ入りを果たすなど、イプスウィッチ側には新戦力の躍動への期待が高まっている。対するリバプールも新陣容の連携を深める重要な機会として捉えており、金曜夜のピッチ上で熱い攻防が繰り広げられることは確実だ。
イプスウィッチのスタメンと前節からの変化
イプスウィッチを率いるゲイリー・オニール監督は、前節マンチェスター・ユナイテッド戦からスタメンを1名変更する決断を下した。中盤の一角を務めていたマルセリーノ・ヌニェスに代わり、エセキエル・パラシオスが移籍後初の先発出場を果たす。サシャ・ルキッチとパラシオスが中盤の底で組み、守備の安定とボール奪取後の素早い展開を担うことになる。前節露呈した中央エリアでのフィルター機能不足を、運動量とボール奪取能力に定評のあるパラシオスの投入で補う狙いは明確だ。
ゴールマウスを守るのは引き続きキエル・スヘルペン。2メートルを超える長身を誇る守護神は、ハイボール処理と至近距離のシュートストップでチームを幾度となく救ってきた。最終ラインは右からダラ・オシェイ、イサ・ディオプ、ジェイコブ・グリーブス、リーフ・デイビスの4バックが形成する。キャプテンマークを巻くオシェイを中心に、リバプールの強力な攻撃陣をいかに抑え込むかが鍵となる。左サイドのデイビスは精度の高いプレースキックと機を見たオーバーラップが武器であり、守勢に回る時間が長くなる中でも貴重な局面打開の起点として機能する。
攻撃陣では前線の中央にエメルソンが入り、2列目には右からアブドゥル・ファタウ・イサハク、中央にフリオ・エンシソ、左に前田大然が配置された。前田とファタウの持つ推進力、そしてエンシソの発想力が噛み合えば、リバプールのハイラインの背後を脅かす強烈なカウンターが成立するはずだ。前田の無尽蔵のスタミナによるハイプレスは、リバプールの右サイドバックの攻め上がりを牽制する上でも守備戦術の核を担う。新加入のフレミングをはじめ、キプリやウアタラといったベンチメンバーも含め、試合展開に応じた機動力のある交代策も用意されている。
リバプールの前線と中盤の豪華陣容
アンドニ・イラオラ監督率いるリバプールは、ピッチのあらゆるエリアで個のクオリティが光るスターティングイレブンを並べた。守護神アリソン・ベッカーの前に広がるディフェンスラインは、フィルジル・ファン・ダイクを中心に、ジャケ、ケルケズ、そしてムニョスやアラウホといった実力派が固める。最終ラインからの正確なフィードは、相手のファーストプレッシャーを一瞬で無力化する破壊力を持つ。
中盤から前線にかけては圧巻の構成力を見せる。ドミニク・ソボスライとアレクシス・マック・アリスターが中盤のゲームメイクを引き受けつつ、攻撃のタクトを振るうのはフロリアン・ヴィルツだ。ヴィルツの緻密なパスと空間認識能力は、敵陣での膠着状態を打開する最大の武器となる。相手のダブルボランチの脇や最終ラインとの間のスペースへ神出鬼没に顔を出し、決定的なスルーパスを配給する役割を担う。
前線にはアレクサンダー・イサクとコーディ・ガクポが名を連ねており、相手守備陣にかける圧力は極めて高い。イサクの圧倒的な得点感覚とガクポの柔軟なポジションチェンジが機能すれば、早い時間帯で試合の主導権を握ることも十分に可能だ。サイドへ流れて起点を作るガクポと、中央で鋭く裏を狙うイサクのコンビネーションは、イプスウィッチの守備陣にとって最大の警戒対象となる。また控えには遠藤航、グラフェンベルフ、バルコラ、フリンポンらが控えており、試合終盤まで強度を維持できる層の厚さを誇る。
中盤の制空権争いと局面のマッチアップ
戦術的な観点から最も注目されるのは、イプスウィッチのダブルボランチとリバプールの中盤トライアングルによる主導権争いだ。パラシオスとルキッチがいかにヴィルツへのパスコースを遮断し、マック・アリスターの配球を制限できるかが試合の流れを左右する。もしリバプールの中盤に前を向いてボールを持たれる回数が増えれば、イプスウィッチの最終ラインはズルズルと後退を余儀なくされ、ペナルティエリア付近で圧倒的な個の質に晒される事態に陥る。
反対に、イプスウィッチが中盤でセカンドボールを回収し、ファタウや前田の走力を活かしたダイレクトなロングカウンターを発動できれば、リバプールの攻撃的な両サイドバックの背後スペースを強襲できる。ファン・ダイクといえども、数的不利の状況下で広大なスペースを守らされる展開になればピンチを招く。セットプレーも重要な得点源であり、リーフ・デイビスの左足から供給される高精度のボールにオシェイやディオプが競り勝つシーンを作れるかどうかも見逃せない要素だ。
今季の立ち位置と戦術的見通し
この試合は両チームにとって、シーズン序盤の勢いを決定づけるうえで大きな意味を持つ。イプスウィッチにとっては、格上とされるリバプールを相手にどれだけ自分たちの時間帯を作り出せるかが試される。オニール監督が目指すコンパクトなブロック形成と、パラシオス加入による中盤の強度向上でリバプールのパスワークを分断できるかが焦点だ。自陣深くで耐え忍びながら少ない決定機を確実に仕留めるリアリズムが求められる。
他方、イラオラ監督にとっても、プレッシングのタイミングとボール保持時のリスク管理が試される。敵地ポートマン・ロード独特の雰囲気に飲まれず、ヴィルツやマック・アリスターを中心としたビルドアップでイプスウィッチのファーストプレッシャーを回避できれば、攻撃陣の能力を最大限に引き出すことができる。早い時間帯に先制点を奪って相手のブロックを広げさせることができれば、リバプールの一方的なペースへと持ち込む展開も現実味を帯びる。
昇格組からのステップアップを狙うイプスウィッチと、タイトル奪還を狙うリバプール。互いの戦術的思惑と今夏補強された新戦力の試金石となる一戦は、ピッチ中央での激しい肉弾戦からサイドのスピード勝負に至るまで、ハイレベルな駆け引きが続く90分間となる。