欧州の舞台で下された衝撃の選考
欧州サッカー連盟(UEFA)が今シーズンのチャンピオンズリーグ(CL)リーグフェーズに臨む各クラブの登録メンバーリストを公開した。そのリストの中で、リヴァプールサポーターのみならず、イングランド国内外のフットボールファンに最も大きな驚きを与えたのが、日本代表MF遠藤航と今夏の新戦力であるイタリア代表FWフェデリコ・キエーザの登録外というニュースである。この決定により、両選手は新フォーマットへと移行したCLリーグフェーズの全8試合に出場できないことが確定した。
リヴァプールを率いるアンドニ・イラオラ監督のこの決断は、イギリスメディア『The Athletic』をはじめとする複数の現地メディアから「ある種の賭けに近い」と評されている。欧州最高峰の舞台において、昨シーズンの主力である経験豊富な守備的MFと、攻撃の切り札として期待されたアタッカーを同時に登録から外すという選択は、今後のクラブの命運を左右する極めて大胆なアプローチと言える。
選手登録枠の制限とイラオラ監督のジレンマ
UEFAが定めるCLの選手登録ルール(リストA)は、最大25人の枠が設けられているものの、そのうち8枠は「ローカル・トレインド(自国育成およびクラブ育成)選手」でなければならないという厳格な条件が存在する。この要件を満たせない場合、登録可能な選手枠はその分だけ削減される仕組みとなっている。リヴァプールは、この自国育成枠の確保に苦慮した形跡があり、結果として外国籍選手(ノン・ホームグロウン選手)の登録枠を削る必要性に迫られた。
この登録制限という制度的な壁のなかで、アンドニ・イラオラ監督は苦渋の選択を迫られた。昨夏にクラブへ加入し、中盤のバランスを整えるアンカーとして重要な貢献を果たした遠藤航だが、今シーズンのイラオラ監督の戦術プランにおいては、より機動力と配球力に長けた別のオプションが優先された格好だ。イラオラ監督の代名詞とも言える超アグレッシブなハイプレスと、素早い攻守の切り替えをベースとした戦術において、中盤の底に求められる役割が昨シーズンとは微妙に変化していることが、遠藤の選外という結果に繋がったと分析されている。
また、加入直後でコンディションの調整段階にあるフェデリコ・キエーザに関しても、即戦力としてCLのタフな舞台に送り出すには時期尚早という判断があったのかもしれない。キエーザは昨季までの負傷歴もあり、クラブとしては彼のフィットネスを慎重に見極めたいという意図が働いたと考えられる。
国内コンペティションへの集中と起用法の変化
CLの舞台から外れたことは、遠藤とキエーザにとって大きな痛手であることは間違いないが、一方でこの決定は彼らのプレミアリーグやカラバオカップ、FAカップといった国内コンペティションでの役割をより明確にする契機にもなり得る。CLという移動を伴う平日の激戦から解放されることで、この2人はリーグ戦に向けた準備に100%の力を注ぐことができる。
特に遠藤航にとっては、プレミアリーグでの出場機会確保に向けた重要なアピールの場が国内戦に絞られることになる。プレミアリーグは世界で最も激しく、インテンシティの高いリーグであり、遠藤の持つ強固なデュエル能力と危機察知能力は依然としてチームにとって不可欠な要素である。イラオラ監督がリーグ戦の過密日程の中で主力を休ませる際、遠藤がピッチ上で見せる安定感はチームの勝敗を左右する鍵となるだろう。
キエーザについても同様に、イングランドのフットボールのテンポとフィジカルに適応するための「時間」が与えられたと捉えることができる。無理にCLのタイトなスケジュールに組み込むのではなく、まずは国内リーグの途中出場やカップ戦のスタメン起用を通じて、徐々にコンディションをピークに持っていく方針だと推測される。
過密日程における「賭け」の成否と指揮官の手腕
CLは今シーズンからグループステージが廃止され、36クラブが1つのリーグで競う新しいフォーマットが導入された。これにより、リーグフェーズだけでも各チームの試合数は従来の6試合から8試合へと増加し、対戦相手の質も高まっている。この過密日程の中で、分厚い選手層をフルに活用することが求められる中、実力者2人を欧州のリストから外したイラオラ監督のマネジメントは、今後の戦績次第で厳しい批判にさらされるリスクを孕んでいる。
もしCLのリーグフェーズで中盤の消耗や前線のタレント不足による取りこぼしが発生した場合、この登録外の決断はメディアやサポーターから格好のターゲットとされるだろう。しかし逆に、プレミアリーグでのタイトル争いにおいて、遠藤やキエーザがフレッシュな状態でチームを救うパフォーマンスを見せ、チームが両コンペティションで好成績を維持できれば、イラオラ監督の先見の明が称賛されることになる。
アンドニ・イラオラ監督が選んだこの「賭け」は、新体制下でのリヴァプールの方向性を明確に示すものとなった。限られたリソースをどのように配分し、シーズン全体の最適解を導き出すのか。欧州と国内の二兎を追うリヴァプールの戦いは、早くもピッチ外の選手選考から緊迫感を増している。