継続する圧倒的な存在感、長谷川唯の4年連続選出
イングランドのプロサッカー選手協会(PFA)は25日、2025-26シーズンの女子年間ベストイレブンを発表した。この栄誉あるリストに、日本女子代表(なでしこジャパン)の誇る二人が名を連ねたことは、イングランド女子スーパーリーグ(WSL)における日本選手の立ち位置を象徴する出来事だ。マンチェスター・シティに所属するMF長谷川唯は、これで4シーズン連続となる通算4度目の選出。もはや彼女にとって、このベストイレブンは恒例の場所となりつつある。
昨シーズンの長谷川は、公式戦29試合に出場し4ゴール4アシストを記録した。しかし、彼女の価値を真に測るには、スタッツの背後に隠された戦術的な貢献に目を向ける必要がある。中盤の要としてゲームをコントロールし、クラブの10シーズンぶりとなるリーグ制覇とFA女子カップ制覇の二冠達成を支えたのは、彼女の圧倒的な『判断の速さ』に他ならない。相手のプレスラインを無効化するポジショニング、そして攻撃のスイッチを入れる縦パスの選択眼は、同僚のMFたちと比肩しても群を抜いている。一貫したパフォーマンスの高さは現地の識者からも評価されており、4年という長きにわたりトップレベルを維持する彼女のタフネスは、シティの成功において欠かせないピースだ。戦術家として知られるガレス・テイラー監督は、中盤の安定感こそが攻撃的な哲学を支える土台であると公言しており、長谷川はその戦術的思想をピッチ上で体現する存在として、チームの心臓として機能し続けている。
飛躍のシーズン、古賀塔子が初選出の快挙
一方、トッテナムに所属するDF古賀塔子にとっても、今季は飛躍のシーズンとなった。若くしてイングランドへ渡り、守備ラインでの安定したプレーを披露し続けた結果、自身初となるPFA年間ベストイレブンへの選出を果たした。守備者としての対人能力や戦術理解度の高さは、ロベルト・デ・ゼルビ監督の下でさらに研ぎ澄まされている。昨季までのトッテナム守備陣は、強豪クラブと比較すると安定感の欠如が致命的な課題として指摘されていたが、古賀の定着はその難題に対する決定的な回答となった。
古賀の特筆すべき点は、イングランド特有のフィジカルコンタクトが激しいリーグにおいても、冷静さを失わずボールを奪い切る技術にある。デ・ゼルビ監督が求めるビルドアップの起点としての役割もこなし、守備ラインから攻撃へスムーズにボールを供給することで、チームの攻守のトランジションを劇的に改善させた。彼女がトップチームの主力としてピッチに立つことで、チーム全体の守備ブロックの質が向上したことは疑いようがない。この初選出は、リーグ内での信頼が確かなものになった証左であり、今後のさらなるステップアップが期待される。1対1の強度、カバーリングの範囲、そして勝負どころでの判断の速さ。それらが評価された今回の選出は、彼女がイングランドで特別なDFとして認知されたことを意味している。
なでしこ両輪が牽引するイングランドの未来
PFAによる今回の選出は、世界最高峰のリーグの一つであるWSLにおいて、日本人選手が単なる助っ人ではなく、チームの核として戦っているという現実を突きつけている。長谷川が構築するシティの中盤と、古賀が統率するトッテナムのディフェンスライン。異なるクラブで活躍する二人の軌跡は、日本の女子サッカーが世界の舞台でどのように進化しているかを如実に示している。
シーズンを通じて高い負荷がかかるイングランドの環境下で、これほどの評価を得ることは決して容易ではない。冬の過密日程や、蓄積する疲労を管理しながら戦うWSLの厳しさを知り尽くした両者だからこそ、この栄冠には重みがある。長谷川にとっては、さらに自身の記録を塗り替えるべく、より高度な戦術的タスクを完遂するシーズンとなった。一方の古賀は、自身の名前がリーグの代表格として刻まれたことで、次年度以降は相手チームからの警戒も一段と強まることになるだろう。両選手にとって今季の成功は、個人のキャリアにおける勲章であるだけでなく、次のシーズンに向けてさらなる高い目標を設定する弾みとなる。彼女たちがイングランドのピッチで紡ぎ出すプレーは、単なる一過性の栄光に留まらず、WSLの戦術史の一部として深く刻まれていくことになりそうだ。今後、彼女たちがいかにリーグの勢力図を変えていくのか、その歩みは日本の女子サッカーの未来を占う重要な指標となるはずだ。