マレーフィールドで交錯した明暗と開幕への足音

新シーズンの開幕が目前に迫る中、スコットランド・エディンバラのマレーフィールド・スタジアムで行われたプレシーズン親善試合は、プレミアリーグのライバル同士にとって非常に対照的な対戦となった。デヴィッド・モイーズ監督率いるエヴァートンが、新指揮官マティアス・ヤイスレの下で再出発を図るニューカッスル・ユナイテッドを3-1で下し、順調な仕上がりをアピールした。

エヴァートンは前線の躍動と組織立ったアタックで終始優位に立ち、タイリーク・ジョージの完全移籍後初ゴールを含む3得点を記録。一方で、完敗を喫したニューカッスルのヤイスレ監督は試合後、チームが抱える戦術面や人員面の弱点を素直に認めざるを得ない状況に追い込まれた。開幕まであとわずかとなる中、両クラブの現在地が色濃く反映された一戦となった。

試合展開:エヴァートンが誇る前線の躍動と鮮烈な連動美

試合は序盤から激しい攻防が繰り広げられた。12分、ニューカッスルのアンソニー・エルランガが抜け出してチャンスを迎えたが、エヴァートンの守護神マーク・トラヴァースが立ちふさがり先制を許さない。エヴァートンも直後にナザン・パターソンのクロスからキアナン・デューズベリー=ホールが決定機を迎えるなど、すぐさま反撃に移った。

試合が動いたのは29分だった。キャプテンのジェームズ・ターコウスキが見事なタックルで相手の攻勢を摘み取ると、そこからエヴァートンが得意とする鋭いカウンターを展開。ハリソン・アームストロングが斜めの絶妙なパスを差し込み、走り込んだストライカーのティエルノ・バリーが正確なシュートをゴール右隅へ流し込んで先制点を奪った。

勢いに乗るエヴァートンは34分、ペナルティエリア内で巧妙な「マルセイユ・ルーレット」を繰り出したデューズベリー=ホールが、ニューカッスルの主将ジョエリントンに倒されてPKを獲得。これをイリマン・エンディアイが冷静に決め、前半のうちにリードを2点に広げた。

後半、ニューカッスルはスタメンを10人入れ替えて反撃を試みたが、流れを変えるには至らなかった。73分にはこの日最も美しい崩しからエヴァートンが加点する。メルリン・ロールの縦パスを交代出場のベトが胸で落とし、ボールを受けたジョージがアームストロングとの迅速なワンツーで相手守備陣を完全に切り崩す。ペナルティエリア内に進入したジョージが鮮やかなファーストタッチから反転し、強烈なシュートを左隅へ叩き込んだ。

試合終了間際の85分にニューカッスルはジャコブ・マーフィーの折り返しからハーヴェイ・バーンズが1点を返したものの、反撃もここまで。エヴァートンが充実した内容で勝利を収めた。

注目株タイリーク・ジョージとモイーズ好みの攻撃陣の完成度

この試合で大きなスポットライトを浴びたのは、チェルシーからのローン移籍を経て今夏にエヴァートンへ完全移籍を果たした20歳のウインガー、タイリーク・ジョージだ。プレシーズン6試合目で奪った移籍後初ゴールは、チーム全体の流暢なパスワークを締めくくる圧巻のワンシーンであり、新シーズンに向けた大きな自信となった。

ジョージだけでなく、先制点を挙げたティエルノ・バリーのポストプレーと背後への抜け出し、中盤で視野の広さを見せた若手ハリソン・アームストロング、そしてチャンスメイクで異彩を放ったデューズベリー=ホールなど、モイーズ監督が構築を進める新スタイルが結実しつつある。素早いネガティブトランジションから縦に速い攻撃を仕掛けるスタイルは、今季のエヴァートンにとって大きな武器となるはずだ。

新本拠地ヒル・ディキンソン・スタジアムでの開幕(クリスタル・パレス戦)を控え、前線の選手たちが軒並み好調を維持していることは、昨季得点力不足に悩まされたチームにとってこの上ない好材料と言える。

マティアス・ヤイスレの苦悩:ニューカッスルが突きつけられた現実と課題

一方で、重い課題を突きつけられたのがニューカッスルのマティアス・ヤイスレ監督だ。新指揮官としてチームの戦術的刷新を目指しているものの、この日のパフォーマンスは守備の脆弱性とビルドアップの不全を露呈するものとなった。

前半、ジョエリントンを中心に中盤の強度を保とうとしたものの、エヴァートンの素早いカウンターに後手を踏み、ペナルティエリア付近での軽率なファウルから失点を重ねた。後半に大幅なメンバーチェンジを行い、幾度か相手ゴールへ迫る場面は作ったものの、チームとしての連動性や決めてに欠け、守備陣も相手の流動的な攻撃を食い止めることができなかった。

ヤイスレ監督は試合後の取材に対し、チームが抱える課題について「十分に自覚している(aware)」と語り、開幕に向けてさらなる補強や戦術の落とし込みが不可欠であることを示唆した。新体制における過渡期とはいえ、プレミアリーグ開幕が目前に迫る中での不甲斐ない内容には、サポーターの間でも不安の声が上がりつつある。

開幕に向けた両クラブのロードマップと今後の展望

エヴァートンは次戦、ダヴィデ・アンチェロッティ率いるリール(Ligue 1)とのプレシーズン最終戦に臨み、開幕戦のクリスタル・パレス戦へ向けて最終調整を行う。前線の新戦力と若手の台頭が見事に噛み合っている現在の状態を維持できれば、新スタジアムで迎える新シーズンに最高のスタートを切ることができるだろう。

対するニューカッスルは、ヤイスレ監督のもとで大至急チームの守備組織と攻撃のバリエーションを再構築する必要がある。個々のタレント能力は高いものの、新監督が求めるハイテンポなスタイルと現有戦力の戦術理解度のギャップをいかに埋めるかが今後の鍵となる。

スコットランドの地で示された明暗は、両クラブにとって新シーズンに向けた重要な試金石となった。上昇気流に乗るエヴァートンと、立て直しを迫られるニューカッスル。それぞれの開幕へ向けたアプローチに注目が集まる。