アルベロア対アロンソ:元同僚による新たな因縁の幕開け
プレミアリーグの新たなシーズンが、ウェストロンドン・ダービーという極上のカードで幕を開けた。クレイヴン・コテージの独特な熱気に包まれたスタジアムで行われたこの一戦は、ピッチ上の戦いだけでなく、ベンチ裏のストーリーでも大きな注目を集めていた。フラムのアルベロア新監督と、チェルシーのアロンソ新監督。かつてレアル・マドリードやスペイン代表で共に黄金期を築き、ピッチ上で多くの栄光を分かち合った盟友同士が、今度はプレミアリーグの指揮官として相まみえることとなった。この「アルベロア対アロンソ」の知将対決は、メディアだけでなくファンの間でも開幕前から大きな話題を呼び、コテージの雰囲気はキックオフ前から最高潮に達していた。
試合前には、かつてフラムを率いた伝説的な名将ケビン・キーガン氏への黙祷が捧げられ、スタジアム全体が拍手で包まれた。両チームはともに伝統的なホームユニフォームを着用。最高気温20度という穏やかなロンドンの夏の夜、満員の観客が見守る中で激しいダービーマッチの幕が上がった。
わずか30秒での先制劇と激しい主導権争い
試合は立ち上がりからドラマチックな展開を見せる。主審のホイッスルからわずか30秒、チェルシーが電撃的な先制点を奪う。フラムの連係ミスからボールを奪うと、エースのコール・パーマーが絶妙なファーストタッチからスルーパスを供給。これに反応したチェルシーの新ナンバー9、ジョアン・ペドロがディフェンスラインの裏へ抜け出し、フラムの守護神ベルント・レノの頭上を越える鮮やかなループシュートを沈めた。
あまりにも早い失点に静まり返るコテージだったが、アルベロア率いるフラムはすぐに闘志を取り戻した。前線からのアグレッシブなハイプレスを徹底し、チェルシーのビルドアップに対して激しいプレッシャーをかけ続ける。このアプローチが実を結んだのは前半中盤だった。昨年、スタンプフォード・ブリッジでの対戦で不運な判定に泣いたジョシュ・キングが、今回は正真正銘のゴールを決める。エリア内でルーズボールを拾うと、チェルシーのGKロベルト・サンチェスのニアサイドを打ち抜く強烈なシュートを叩き込み、試合を振り出しに戻した。
パーマーの輝きとチェルシーの「攻撃的トリオ」の可能性
一進一退の攻防が続くなか、チェルシーは個のクオリティと戦術的なスピード感で再び優位に立つ。前半40分、アストン・ヴィラから1億1700万ポンドという巨額の移籍金で加入したモーガン・ロジャーズが、その価値を証明する。同じく新加入で5200万ポンドのDFマクセンス・ラクロワが強気なドリブルで前線へ攻撃参加し、ラストパスを供給。これをロジャーズが無人のゴールへ押し込み、チェルシーが勝ち越しに成功した。
さらに後半開始直後、チェルシーは追加点を奪う。GKサンチェスのロングフィードを起点に、ジョアン・ペドロが素早くディフェンスラインの裏へ抜け出してアシストを送ると、走り込んだパーマーが確実にフィニッシュ。スコアを3-1とし、アロンソ体制の攻撃陣が持つ無限のポテンシャルを示した。
昨シーズン、怪我に苦しみイングランド代表のワールドカップメンバーからも漏れる悔しさを味わったパーマーだったが、この日は1ゴール1アシストと圧巻の存在感を発揮。試合後、アロンソ監督は「強いチームを作るためには、コールのような偉大な選手が必要だ。今日の彼は責任感と成熟度、そして自由な発想をピッチ上で見せてくれた」と絶賛した。パーマー、ペドロ、ロジャーズが形成するフロントスリーは、今シーズンのプレミアリーグで最も恐しいユニットの一つになる予感を感じさせた。
フラムの驚異的な反撃と新戦力ガルシアが示した希望
しかし、アルベロア率いるフラムもただでは引き下がらなかった。スタジアムの大声援を背に、再び攻撃のギアを上げる。後半中盤、スペインの至宝ホルヘ・クエンカが放った見事な斜めのロングパスが、右サイドを駆け上がったティモシー・カスターニュへ通る。カスターニュのボレーシュートは一度GKに防がれたものの、そのこぼれ球にいち早く反応したのは、今夏レアル・マドリードから加入した期待の新星ゴンサロ・ガルシアだった。泥臭く押し込んで移籍後初ゴールを記録し、点差を再び1点に縮めた。
ガルシアはマッチデープログラムのインタビューで、「アルベロア監督が数分で僕を口説き落とした。長年過ごしたマドリードを離れるのは辛かったが、この野心的なプロジェクトの一部になれて誇らしい」と語っていたが、その言葉通りピッチ上で強い執念を見せた。その後もフラムはアントニー・ロビンソンがGKの頭上を狙うループシュートを放つなど、幾度となくチェルシーゴールを脅かしたが、あと一歩が及ばず。激闘は3-2でチェルシーの勝利に終わった。
守備の綻びとアロンソ体制が抱える今後の課題
アロンソ新監督にとってプレミアリーグ初陣での勝ち点3獲得は素晴らしいスタートとなったが、同時に多くの課題も浮き彫りになった。特に守備陣、そしてゴールキーパーのロベルト・サンチェスの不安定さは、試合後に元イングランド代表DFゲイリー・ネビルら解説陣からも厳しく指摘された。サンチェスは足元のビルドアップで不安定なパスを連発し、失点シーンだけでなくいくつかの場面でフラムのハイプレスに引っかかる場面が見られた。
アロンソ監督が標榜する「ポゼッションを重視し、自陣から組み立てるスタイル」において、GKの安定感は必要不可欠である。チェルシーが今後トップ4、あるいはそれ以上を目指すためには、守備の組織構築とGKのパフォーマンス改善が急務となるだろう。今回はフロントスリーの爆発的な攻撃力で勝利を収めたが、シーズンを通してクリーンシートを増やしていくための守備戦術のアップデートが求められる。
それぞれの次なるステップへ
敗れたフラムのアルベロア監督だったが、試合後の記者会見ではポジティブな表情を見せた。「結果には満足していないが、選手たちが見せたキャラクター、パーソナリティ、そしてエネルギーには非常に満足している。立ち上がり30秒で失点しながらも、我々のスタイルを貫いてチェルシーを追い詰めた。この若く才能あるチームは、シーズンを通して成長し続けると確信している」と語り、チームの今後の可能性に自信を示した。
フラムは中2日でカラバオカップのAFCウィンブルドン戦を迎える。ここで早期の立て直しを図り、リーグ戦次節へと繋げたいところだ。一方のチェルシーは、アロンソ新監督のもとで最高のスタートを切り、チームとしての結束を高める貴重な勝利を手にした。ウエストロンドンの激闘は、両チームにとって今後の長いシーズンに向けた大きな試金石となった。