マレスカ体制の初陣で掴んだ劇的な逆転勝利
2026-27シーズンのプレミアリーグ開幕戦。エティハド・スタジアムは、かつてジョゼップ・グアルディオラ監督の右腕を務め、今季からマンチェスター・シティを率いるエンツォ・マレスカ新監督の帰還を歓迎する温かい雰囲気に包まれていた。しかし、試合自体は決して平坦なものではなく、新体制の船出にふさわしい、極めてスリリングかつ劇的な逆転劇となった。
昨シーズン限りで退任した名将の後を継いだマレスカ監督にとって、この開幕戦は自身の戦術がどこまでチームに浸透しているかを測る重要な試金石であった。対するは、こちらも今季から新指揮官にマルコ・ローゼを招聘したAFCボーンマス。両者ともに新しいアイデンティティを確立しようとする中での対戦は、戦術的な駆け引きが凝縮された非常に緊密な展開を見せた。最終的にシティが2-1で勝利を収めたものの、残りわずか数分までボーンマスがリードを保ち、エティハド・スタジアムに衝撃を与えかけた展開は、今シーズンのプレミアリーグがさらに過酷な戦いになることを予感させるに十分だった。
規律あるボーンマスの守備とタバーニアーの先制弾
試合は立ち上がりからホームのシティがボールを支配する展開となった。マレスカ監督が志向する流動的なポゼッションサッカーに対し、ボーンマスのローゼ監督はコンパクトなブロックを敷いて組織的に対抗。特に今夏加入し、プレミアリーグデビューを飾った元ベンフィカのDFアントニオ・シウバは、ジェームズ・ヒルとのセンターバックコンビで抜群の安定感を見せ、シティのエースであるアーリング・ハーランドに仕事をさせなかった。
シティはリコ・ルイスやフィル・フォーデンが積極的に決定機を作り出そうとし、ハーランドも自身の200試合出場メモリアルを飾るべくゴールを狙ったが、ボーンマスのGKジョルジェ・ペトロヴィッチのファインセーブにも阻まれ、ゴールネットを揺らすことができない。
耐え忍ぶボーンマスは前半26分、鮮やかなカウンターから先制に成功する。アダム・スミスのディープなパスを受けたラヤンが、中央のエバニウソンへ展開。エバニウソンからのピンポイントクロスを、絶妙なタイミングでボックス内に侵入したマーカス・タバーニアーがゴール至近距離から冷静に押し込んだ。ボーンマスにとって、プレミアリーグの歴史においてエティハド・スタジアムで先制点を奪ったのはこれが初めての快挙であった。このゴールにより勢いに乗ったボーンマスは、その後もジャスティン・クライファートらが追加点を狙うなど、シティに対して一歩も引かない積極的な姿勢を貫いた。
マレスカの勝負手と終盤の怒涛の反撃
0-1のまま後半に折り返した試合は、シティが焦燥感を募らせる展開が続いた。マレスカ監督は後半57分にマテウス・ヌネス、さらに63分にはマテオ・コバチッチとラヤン・シェルキを投入し、中盤の構成力と前線の創造性を高める勝負に出る。この選手交代が徐々にボーンマスを押し込む要因となり、試合の潮目が変わり始めた。
ボーンマスは執拗なプレスと波状攻撃に対抗し続けたものの、試合終盤に差し掛かると、運動量の低下とともに自陣深くに押し込まれる時間が長くなった。タバーニアーは試合後に「シティの波のような攻撃に対して常に集中し続けるのは極めて困難だった」と振り返っている。
そして84分、ついにシティの執念が実を結ぶ。交代出場のシェルキが放った正確なコーナーキックから、ゴール前に攻め上がっていたイングランド代表DFマーク・グエヒが頭で合わせる。シュートは相手ディフェンダーにわずかに屈折しながらもゴールへと吸い込まれ、値千金の同点弾となった。グエヒにとっては、後半開始直後に決定的なヘディングシュートを外していただけに、そのミスを完全に帳消しにする重要な一撃となった。
グバルディオールがもたらした歓喜と今後の展望
試合を振り出しに戻したシティの勢いは止まらなかった。アディショナルタイムに入った90+1分、左サイドから押し込んだ展開から、最後はヨシュコ・グバルディオールがペトロヴィッチの牙城を崩す劇的な逆転ゴールを流し込んだ。グバルディオールにとっては、かつてRBライプツィヒ時代に指導を受けたローゼ監督の目の前で決めた恩師への「恩返し」とも言える一撃だった。オフサイドの判定を巡り長時間のVARチェックが行われたが、最終的にゴールが認められると、エティハド・スタジアムは歓喜の渦に包まれた。
この敗戦により、ボーンマスのクラブ記録であった公式戦無敗記録は「18」で途絶えることとなった。ローゼ監督の初陣は勝ち点獲得にあと一歩届かず、非常に悔しい結果となった。それでも、先制点をもたらしたタバーニアーは「新監督のもとで取り組んできたポジティブな要素を多く出せた。これだけのパフォーマンスができたことは自信になる」と前を向いており、今後のシーズンにおける彼らの躍進を期待させる内容だったことは間違いいない。
一方、辛くも白星発進を決めたシティのマレスカ監督は「完全に勝利に値するパフォーマンスだった」と選手たちの不屈の精神を称賛した。グアルディオラの後継者という計り知れない重圧の中、最初のハードルをドラマチックな形で乗り越えたことは、新生マンチェスター・シティの結束力を高める上でこれ以上ない薬となるだろう。新戦術の定着にはまだ時間を要するものの、苦境にあっても勝ちきる勝負強さは健在であり、今シーズンも彼らが優勝争いの中心に位置し続けることを証明する開幕戦となった。