試練の序盤戦、ホームでの初白星を狙うスパーズ
プレミアリーグの開幕から白星が遠いトッテナム・ホットスパーが、本拠地トッテナム・ホットスパー・スタジアムでアストン・ヴィラを迎え撃つ。今夏、大型補強を敢行し期待値が高まっていたスパーズだが、蓋を開けてみれば開幕から4戦未勝利という屈辱的なスタートとなった。それどころか、攻撃的なタレントを揃えながらいまだ無得点という、予想外の停滞に陥っている。ロベルト・デ・ゼルビ監督が標榜する、後方からのビルドアップを軸とした支配的なフットボールは、現時点では相手の強固なブロックを崩し切るまでの連動性に欠けているのが現状だ。この週末の早いキックオフは、重苦しい停滞感を打破し、本来のポテンシャルを証明するための重要な試金石となる。
現地のトレーニング場からは、希望の持てる兆候も報じられている。サイドバックの要であるペドロ・ポロが直近の練習に完全合流を果たし、戦列を離れていたデヤン・クルゼフスキについても復帰が示唆された。デ・ゼルビ監督の戦術は個々の選手の高い戦術理解度と、絶妙なポジショニングのタイミングを要求する。ポロやクルゼフスキの復帰は、単なる戦力増強以上の意味を持つはずだ。彼らがピッチ上のパズルのピースを埋めることで、新加入のサヴィーニョやオマール・マーモッシュといったタレントが、より自由かつ効果的に相手陣内を攻略できるようになるだろう。今季のトップ4入りという高い目標を掲げるクラブにとって、もはや勝点を取りこぼす余裕は残されていない。中盤の構成力不足が露呈していただけに、彼らの帰還は停滞する攻撃陣に新たな生命線を送り込むことになる。
負傷者続出のアストン・ヴィラ、敵地での再建へ
一方のアストン・ヴィラを率いるウナイ・エメリ監督は、シーズン序盤にして過酷な編成のやり繰りを強いられている。カラバオ・カップではコヴェントリー・シティ相手に3-1と快勝を収め、カップ戦での勢いは維持しているものの、プレミアリーグのタフな環境では結果が伴っていない。エメリは会見で「チームはまだ成長のプロセスにある」と繰り返し強調しているが、その背景には目を覆いたくなるような負傷者の山がある。中位で足踏みをする現状を打破するには、戦術の熟成とともに選手層の厚みが不可欠だが、現在は計算できる駒が極端に限られている。
特筆すべきは、守護神マルコ・ビゾットの欠場だ。さらにパウ・トーレス、イアン・マートセン、レオン・ゴレツカといった主力級の離脱が続き、指揮官は限られた選択肢の中から最適な11人を選び出さなければならない。しかし、光明もある。開幕戦の退場で出場停止を科されていたジョアン・ゴメスが復帰することで、中盤のデュエルと攻守の切り替えにおいて、チームには待望の安定感が戻るはずだ。DFのヴィクトル・リンデロフは、「順位表の数字は理想とは程遠いが、ロッカールームの雰囲気は依然として前向きだ」と語る。昨シーズン、このスタジアムでスパーズを撃破したという記憶は、選手たちの自信を支える確かな基盤となっている。苦しい状況下で迎える敵地での一戦こそ、チームの真の団結力が試される場となるだろう。
戦術的噛み合わせが左右する勝敗の行方
エメリ監督は、トッテナムの潜在能力を高く評価しつつも、自軍が適応のプロセスにあることを隠そうとはしない。新守護神として期待されるジオ・スズキがビルドアップの起点として適応を見せていることは明るい話題だが、チームとしての連動性は発展途上だ。特に、トッテナムがペドロ・ポロらの復帰によりサイド攻撃を強化してくることを警戒しており、エメリは「コンパクトな陣形を維持しつつ、ボールを動かす勇気を持つこと」を勝利の必須条件に掲げた。アーロン・ワン=ビサカの加入による守備強度の向上も、この試合のプランに組み込まれる重要な要素であり、サイドの攻防が試合の分水嶺となることは想像に難くない。
スパーズ側の狙いは、ポロを高い位置に押し出し、ハーフスペースをマーモッシュやクルゼフスキに攻略させる形にある。対するヴィラは、強固な4-4-2のブロックを敷き、中盤のデュエルで上回ることで、トッテナムのテンポを阻害したいはずだ。特にゴメスの復帰は、デ・ゼルビのパスワークを中盤で寸断するための強力な防波堤となる。この試合の終了後には、代表戦ウィークによる約3週間の中断期間が控えている。このタイミングで勝点3を手にできるかどうかは、単なる順位以上の影響をクラブにもたらす。スパーズが攻撃の歯車を噛み合わせるのか、それともヴィラが強固な規律で敵地の空気を静まり返らせるのか。週末の北ロンドンで繰り広げられるのは、両指揮官の戦術的矜持が激突する、極めて密度の高いチェスゲームとなる。中断期間をポジティブなムードで迎えるのは、90分間の激闘の末、ピッチ上で自らのプランをピッチに体現できた側である。